アラスカの朝


冬  長い長い夜は  ゆっくりと明るくなる

7時  どこかで車のエンジンをふかす音  小道の雪を踏みしめる音
キュッキュッキュッキュッ・・・
外はまだ星の光の中

おはよう

あたたかく  するするとした肌の感触
お湯をわかし  コーヒーを入れ

8時  いってきます
少し小首をかしげ
トントントントントン  ガチャ
キュッキュッキュッキュッ・・・

9時  ようやく濃紺の空がほんのり色づく
南の空からじわじわと
丘陵にかかる青灰の雲  電灯の青い光粒  音もなく流れる車
時間は彼方から滑り落ちてくる砂時計
隣の部屋  密やかなシャワーの音

10時  校舎の陰から日が昇る
まるで遥かな銀河からやっとたどり着いたかのように
乾いた光が空を染める
道行く人  一人  また  一人  少し視線を落として  少し首をすくめて
車のエンジンを暖める白い煙  あそこにも  あそこにも


11時  日はもうこれ以上昇ることはない
けして  高くは上がらず
けして  この雪を消すこともない
表面の雪粒がキラキラと光り
やわらかそうで
触れるとサリサリとこぼれ
いつの間にか指を濡らす
けして手に入れることのかなわぬ無数の宝石達
日とともに輝き  日とともに沈黙する
なんという透明さ・・・


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