まるちゃんと記憶の香煙
星降る夜の嵐

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真っ暗な大草原にいた。

漆黒の空が暗い地平線と溶け合い、見渡す限り広がっている。
私は高校生だった。

カナダでの集団キャンプ最終夜。
キャンプファイヤーを囲み、
拾ってきた枝の先にソーセージやマシュマロをつけ、ゆっくり焼く。
小さな炎のかけらがクルクル舞い上がる。

低い歌声が流れる。

・・・ローズ ローオーズ ローオーズ
ウィル アイ エーバー シー ジー ウェー・・・

この夜は、初めて野外で寝ることになっていた。
ティピーという、太い丸太で骨組みされた背の高いテントに、20人ほどの中高生が寝袋を持ち込む。

しばらく騒いだ後、外から洩れ聞こえるリーダー達の低い話し声に気付いた。
ひんやりした外へ出てみる。


満天の星が覆いかぶさってきた。
天空から地平線まで、大空いっぱいに息苦しいほどの星。


やがて、星が流れ始める。
一つ、
二つ、
また一つ。

すう・・・と緩やかな弧を描いては消え、そのたびに息を呑む。
ざわめきがだんだん小さくなっていく。

静かな夜に星だけが生きている。


そうして、どのくらいの時間が経ったのか。
夜空の隅の、淡い閃光に気付いた。

遥か遠くで嵐が起こり、稲妻が走っている。
天と地をむすぶ、わずか3ミリほどの稲妻。
放電のたびに周囲がぼんやり光る。


世界のどこかで嵐が起こっていても、見上げれば星が輝いている。

2003/8/5

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